技術系人材の育成は、単に知識や技能を教え込むだけでは完結しません。食品業界では、安全性・品質・効率・コストといった多様な観点から、現場での判断力や課題解決力を求められるため、育成のアプローチも多様であるべきです。
しかし現実には、「ティーチャー」「トレーナー」「メンター」「コーチ」「アドバイザー」など、指導する立場の呼称が現場で混在し、その違いが十分に理解されていないケースが少なくありません。育成担当者自身が、自分の役割が何であり、どこまで関わるべきかを明確に理解していなければ、効果的な人材育成は難しくなります。
これらの役割の違いは、日本において十分に理解されているとは言いがたいのが現状です。
以下の点からその傾向が読み取れます。
- 用語の使い分けがあいまい
- 「トレーナー」「インストラクター」「ティーチャー」は混同されやすく、教育担当者を一括りにされることが多いです。また、「メンター」と「コーチ」の区別もあいまいで、「相談に乗る人」くらいの理解にとどまっている場合が多く見られます。
- 「トレーナー」「インストラクター」「ティーチャー」は混同されやすく、教育担当者を一括りにされることが多いです。また、「メンター」と「コーチ」の区別もあいまいで、「相談に乗る人」くらいの理解にとどまっている場合が多く見られます。
- 制度設計が名前負け
- 例えば「メンター制度」を導入していても、実際は単なる業務指導(トレーナー的な役割)にとどまり、本来の“キャリア支援”や“信頼関係に基づく対話”が機能していないケースが少なくありません。
- コーチングやファシリテーションは外来概念としての扱い
- これらは比較的新しい概念で、導入されていても一部の管理職や人事部門に限られがちです。現場レベルには浸透しづらい傾向があります。
- 実践より“肩書き”が先行
- 役割の実体がないまま、「インストラクター」や「アドバイザー」といった肩書だけが設定されているケースもあり、混乱を招いています。
なぜ理解が進みにくいのかといえば、
日本の教育文化は「教える側が主導権を持つ」スタイル(=ティーチング型)が根強く、コーチングやファシリテーションのような「引き出す」アプローチはまだ発展途上状態です。また、上司・部下の関係性が上下的で、対話や問いかけ型の育成がなじみにくい風土があります。加えて、OJT中心の人材育成文化において、育成の型を言語化・形式化すること自体が遅れている実態もあります。
少し乱暴ですが、極論は下記の通りです。
- ティーチャー・インストラクター・トレーナーは「教える」ことに重点がありますが、教える対象や手法が異なります。
- アドバイザーは「専門家視点からの道しるべ」を提供します。
- ファシリテーターは「教えない支援者」、話し合いの進行役に徹します。
- メンターは「人生の先輩」です。
- コーチは「自分で答えを出させる支援者」です。
たとえば、技術を“教える”場面ではトレーナーやインストラクターの役割が有効です。一方、若手の自立や課題意識を“引き出す”には、コーチやファシリテーターのような関わり方が求められます。悩みに寄り添いながら長期的な成長を支援するのは、メンターやアドバイザーの役割です。
同じ「指導」でも、その目的と対象者によって最適な関わり方は異なるのです。
特に技術職の育成は、「なぜこのやり方が正しいのか」「どうすれば他者に伝えられるのか」「現場で再現できるか」など、実践と理解の往復が必要です。そのため、指導者側が適切な関わり方を選べるようになることは、育成の質を大きく左右します。
食品企業の技術職育成に際してこれらの指導者を配する場合、役割の違いを明確にし、育成ステージや目的に応じて適切に配置することが重要です。
■ 基礎知識・標準作業の習得段階に有効 ➡ ティーチャー/インストラクター/トレーナー
注意点:
- 一方的になりすぎないようにする(質問しやすい雰囲気をつくる)
- 教える内容を業務とリンクさせ、「なぜ学ぶのか」を明示する
- 実務で役立つ“暗黙知”も、言語化・見える化して補足する
■ 業務定着やキャリア初期の不安解消、モチベーション維持に有効 ➡ チューター/メンター
注意点:
- 感情面・心理的安全性への配慮が重要(押し付けにならない)
- 相手のペースに合わせて関係性を築く
- メンターは「仕事の成功例」だけでなく「失敗談」も共有することで信頼を得る
■ 特定課題への技術的助言や意思決定支援に有効 ➡ アドバイザー
注意点:
実行責任は相手にあるため、助言の「根拠」や「前提条件」を明確に伝える
- 過度な指示や「正解の押しつけ」にならないように注意
- 継続的なフォローアップ体制も整えると効果的
■ 中堅以降の自立型技術者育成やチーム課題の解決に有効 ➡ コーチ/ファシリテーター
注意点:
- 技術知識をあえて教えず、思考や問いを引き出す姿勢が大切
- 相手が自ら考える時間や失敗の余地を尊重する
- ファシリテーターは、中立性と“場”の安全確保が鍵
■ 共通の注意点を下記に挙げます。
① 指導者の役割混同を避ける : 同じ人が複数の役割を担う場合、「教える」と「引き出す」の切り替えを意識する必要があります。
➁ 育成対象のレベルと目的を見極める : 例:新卒社員にはティーチャー/トレーナー、中堅技術者にはコーチ/アドバイザーなど
③ 指導者自身の教育も必要 : 「ティーチング」と「コーチング」の違いなど、基礎的な育成技法を学ばせることが望ましいです。
部下を持つ、或いは。人材育成に責任ある管理職の皆さんには、これらの指導タイプの違いを理解し、育成体制の設計や現場の支援において意図的に活用していただくことが重要です。
人を育てることは、企業の未来を育てることと同じです。誰が、どのように、どんな役割で関わるか――それを見極め、整える力こそが、今日の育成マネジメントに求められているのです。こそが、今日の育成マネジメントに求められているのです。


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