R&Dスキルを分けるもの

製品開発

製品開発におけるスケールアッププロセスにおいて、相似性は非常に重要な概念です。幾何学的、メカニズム、熱的、化学的な相似性を考慮することで、小規模な実験結果から大規模なプロセスを予測し、成功させることができます。ただし、スケールアップは複雑なプロセスであり、様々な課題が存在するため、慎重な検討と対策が必要となります。

1.製品開発におけるスケールアッププロセスと相似性

製品開発において、ラボスケールで成功したプロセスを、より大規模な生産に適用するスケールアップは非常に重要なステップです。このスケールアッププロセスにおいて、相似性という概念は、小規模な実験結果を大規模なプロセスに適用するための重要な指針となります。相似性には、大きく分けて以下の種類があります。

  • 幾何学的相似性
    • 定義 : 形状が相似であること。
    • 重要性 : 装置や反応容器の形状が、スケールアップ前後で相似であることで、流体の流れや熱伝導などの物理現象が相似になる可能性が高まります。
    • 例 : 円筒形の反応容器を、単にサイズを大きくするだけでなく、直径と高さの比率を一定に保つ。
  • メカニズムの相似性
    • 定義 : プロセスに関わるメカニズムが、スケールアップ前後で同一であること。
    • 重要性 : 化学反応や物理現象が同じメカニズムで進行することで、製品の品質が安定し、予測が可能になります。
      • 運動の相似性 : 流体の流れ方や攪拌の様式が相似であること。
      • 力学的相似性 : 圧力、力、速度などの力が相似であること。
  • 熱的相似性
    • 定義 : 熱に関する現象が相似であること。
    • 重要性 : 反応温度や熱伝達率が相似であることで、反応速度や製品品質に影響を与えます。
    • 例 : 熱交換器の面積をスケールアップに合わせて増やす。
  • 化学的相似性
    • 定義 : 化学反応が相似であること。
    • 重要性 : 反応速度、選択性、収率がスケールアップ前後で変わらないことが理想です。
    • 例 : 触媒の量や種類を調整することで、反応速度を制御する。

2.スケールアップにおける相似性の重要性

  • 予測性の向上 : 小規模な実験結果から、大規模なプロセスの挙動を予測することができます。
  • 品質の安定化 : 製品品質のバラつきを抑制し、安定した品質の製品を製造することができます。
  • コスト削減 : 試行錯誤を減らし、効率的なスケールアップを可能にします。
  • リスク低減 : スケールアップに伴うトラブルを事前に予測し、対策を講じることができます。

3.スケールアップにおける課題

スケールアップでは、以下の課題が考えられます。

  • 相似性維持 :すべての相似性を完全に維持することは困難な場合が多いです。
  • スケール効果 :スケールアップに伴い、無視できない影響が現れることがあります。
  • 複雑性増加 :プロセスの複雑さが増し、制御が難しくなることがあります。

最後に肝心なのが、製品開発が量産化がかなった時点で完了すると理解するR&Dとのその先の理解を深められるR&Dの大きさ差です。R&Dスキルをわけるものです。量産後の製品の品質を分析し、ラボスケールにスケールダウンシミュレーションすることは、工程設計の精度向上に非常に有効な手段です。なぜ有効なのか?

  • 問題点の根本原因究明: 量産品に問題が見つかった場合、スケールダウンシミュレーションにより、問題が発生している根本的な原因をラボレベルで再現・分析できます。これにより、問題解決のための具体的な対策を検討することができます。
  • 工程条件の最適化: スケールダウンシミュレーションを通じて、様々な工程条件を効率的に検討し、最適な条件を見つけることができます。これにより、製品品質の安定化や生産コストの削減に貢献します。
  • 新しい材料やプロセスへの適用: 新しい材料やプロセスを導入する前に、スケールダウンシミュレーションでその効果を事前に評価することができます。これにより、大規模な投資を行う前にリスクを低減できます。

加えて何よりも重要なのが、

  • 人材育成: 若手研究者や技術者は、スケールダウンシミュレーションを通じて、製品開発のプロセスを深く理解し、実践的なスキルを習得することができます。その効果は少なくないことを理解するべきです。
    1. 実践的な理解の促進 :ラボスケールでの再現により、理論だけではなく、現場での実務に即した技術と知識が身につきます。
    2. 問題解決能力の向上 :スケールダウンシミュレーションで発生する問題に対処することで、実際の課題解決力が鍛えられます。
    3. 実験・検証スキルの向上 :データ収集と分析を繰り返すことで、精緻な実験設計と結果の評価スキルが向上します。
    4. 改善の循環プロセスの理解 :フィードバックと改善を重ねることで、持続的な改善文化が育成されます。
    5. 新しい技術の習得 :新しい技術や機器を扱うことで、技術に対する適応力と応用力が向上します。
    6. チームワークの強化 :チームで協力して課題を解決する過程で、コミュニケーションや協力のスキルが強化され
    7. クロスファンクショナルな連携の強化 :異なる部門と協力しながら進めることで、部門間の連携スキルが向上します。

組織としてR&Dスキルが上がらない背景の多くはスケールダウンシミュレーションの不実施です。

masskun

食品産業で働く現役R&D、QA実務者のサポートを願って経験共有のブログを始めました。
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因みに私は60代の食品技術者。製品開発および品質保証の仕事をしてきました。清涼飲料や流動食などの液体フォーマットが中心です。ただ、業務用食品卸売業や衛生紙製造業の企業にも勤務経験があり、多様な食品、容器包装に加え資材の経験もあります。

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